高血圧の基準がゆるくなった!?
最近、患者さんから高血圧の基準がゆるくなったのですね、このくらいであれば自分は大丈夫ですねと言われる機会が増えて不思議に思っていました。院長は日本高血圧学会の専門医でもあるのですが、そのような通達は聞いたこともありません。調べてみると次のようなことがわかりました。
令和6年4月から全国健康保険協会(協会けんぽ)が、従来から行っていた「未治療者の方への受診勧奨(重症化予防事業)」の勧奨基準を、「収縮期血圧140 mmHg以上/拡張期血圧90 mmHg以上(I度高血圧)」の基準から「収縮期血圧160 mmHg以上/拡張期血圧100 mmHg以上(II度高血圧)」の基準に変更したからです。これは厚生労働省 健康・生活衛生局が改編した「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」と足並みをそろえています。
高血圧は生活習慣病の側面が大きく、まずは体重減少、適度な運動、お酒を減らす、減塩、野菜・果物摂取の増加など生活習慣を改善してもらい、そのうえで難しければ1か月後を目安にかかりつけ医の診療を受けることを推奨しているのです。しかしながらその生活習慣の改善を適切に行えるかが重要なので、この受診勧奨の基準はわかりにくいと思います。
しかも説明文にはただし書きがあり、脳心血管病、心房細動、慢性腎臓病、糖尿病、危険因子の集積がある場合は、至急かかりつけ医の医療機関を受診してくださいとあります。危険因子の集積とは、65歳以上、男性、喫煙、脂質異常症、肥満のうち三つ以上とされています。したがって、結局は健康診断で指摘されたI度高血圧のかたはそのほとんどが該当することになるでしょう。
ところで、全国健康保険協会(協会けんぽ)の受診勧奨基準は高血圧以外もゆるくなっています。下図の空腹時血糖/HbA1cとLDLコレステロールをご覧ください。いずれもまずは生活習慣の改善を試みてくださいというメッセージととらえられますが、逆に言うと、下の図表に該当すれば「すでに病気を発症していますので至急かかりつけ医で治療を始めてください」というメッセージとも考えられます。さらに今次の診療報酬改定と共通している医療費削減の意味合いを有していると思われます。いずれにしても早めの受診が健康寿命の延伸のためには正義であることは言うまでもありません。
全国健康保険協会(協会けんぽ)のホームページから。