マンジャロは肥満のための胃切除療法と同等の効果
マンジャロの医学・医療における有用性が次から次に報告されていますが、このたび肥満に対して胃を切除するという外科的手法と比較しても、有効性は同等であったとの論文が発表されました。その概要をお知らせいたします。
Wu JY, et al. Comparative clinical outcomes of adults with obstructive sleep apnea and comorbid obesity receiving tirzepatide versus bariatric metabolic surgery: A Multi-Institutional propensity score matched study. Diabetes Research and Clinical Practice 226 (2025) 112294. https://doi.org/10.1016/j.diabres.2025.112294
<概要>
本研究は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と肥満を併発する成人における、ティルゼパチドとバリアトリック代謝手術(BMS)の臨床結果を比較したものです。TriNetXグローバルコラボレーティブネットワークを用いた後ろ向きコホート分析を行い、患者をティルゼパチド群とBMS群に分け、傾向スコアマッチング(PSM)を実施しました。主要な結果は、全死因による死亡、主要有害心血管事象(MACE)、および主要有害腎事象(MAKE)の複合指標でした。PSM後、各群に10,269人が含まれ、主要な複合指標における有意差は見られませんでしたが、ティルゼパチド群はBMS群に比べてMAKEの発生率が有意に低いことが示されました。この結果は、ティルゼパチドがBMSに対する有望な代替治療法であることを示唆しています。
<解説>週1回皮下注射のティルゼパチドは、侵襲の大きい胃切除術と有効性において同等であったということは、肥満の患者さんにとっては大きい意義があります。手術した場合は将来何かあっても元に戻すことはできません。癌などにあってはそのことは後顧の憂いをなくすという意味で重要ですが、将来気が変わって手術しなければよかったというときには復元できないわけです。その1点だけでもティルゼパチドの優位性はあると解釈できます。この研究はさらに主要有害腎事象(MAKE;major adverse kidney effects)が有意に少なかった(ハザード比0.6)ことを示しており、具体的には腎臓病を原因とする死亡、透析導入をおおきく40%も減らしたことを意味します。この違いは減量とは独立してティルゼパチドによる直接的な腎保護効果の可能性を示しています。実際、いくつかのレポートもでていますのでいずれまとめてみたいと思います。