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リーキーガット症候群とは

リーキーガット症候群(Leaky Gut Syndrome)について

1. リーキーガットとは?

「リーキーガット」とは、日本語にすると「腸もれ症候群」とも言える状態です。
腸には、食べ物から必要な栄養を吸収し、不要なものを外に出す役割があります。健康な腸では、腸の壁がバリアとなって「通すべきもの」と「通してはいけないもの」をきちんと分けています。

しかし、腸の壁が弱くなったり傷ついたりすると、本来なら通さないはずの未消化の食べ物や細菌、毒素が血液に入り込み、体にさまざまな不調を引き起こすことがあります。これを「リーキーガット症候群」と呼びます。

2. 原因として考えられるもの

リーキーガットは、ひとつの原因だけで起こるのではなく、いろいろな要素が重なって生じます。

  • 添加物や砂糖の多い食生活

  • アルコールのとりすぎ

  • 腸内細菌のバランスの乱れ

  • 薬の影響(抗生物質、痛み止めなど)

  • 強いストレスや睡眠不足

3. 主な症状

リーキーガットは、腸の症状だけでなく全身に影響します。

腸に出やすい症状

  • 下痢や便秘

  • ガスが溜まりやすい

  • 食後の不快感

全身に出やすい症状

  • 慢性的な疲れ

  • 肌荒れ、湿疹、アトピー

  • 関節痛や頭痛

  • 集中力の低下

  • 体重が減って痩せすぎになる

4. 痩せすぎとの関係

腸のバリアが壊れると、栄養をしっかり吸収できなくなります。そのため、いくら食べても体重が増えにくく、痩せすぎの原因になることがあります。
また、腸の炎症が続くとエネルギー消費が増え、さらにやせてしまうこともあります。

5. 検査について

残念ながら、日本では「リーキーガット」を直接診断する保険の検査はありません。ただし、血液検査で栄養不足を調べたり、便検査で腸内環境を調べたりすることで、間接的に腸の状態を知ることができます。

6. 改善のためにできること

リーキーガットの治療の基本は「腸を守り、整えること」です。

  • 食事
     → 添加物や甘い飲み物を控える
     → 発酵食品(味噌、納豆、ヨーグルトなど)を取り入れる
     → 食物繊維をしっかり摂る

  • 栄養
     → 亜鉛、鉄、ビタミンD、マグネシウムを補う
     → プロバイオティクス(善玉菌サプリ)を活用する

  • 生活習慣
     → 十分な睡眠をとる
     → 適度な運動をする
     → ストレスを減らす工夫をする

 

7. プロバイオティクスへの期待

リーキーガット症候群に対してプロバイオティクスを使うのは、一定の効果が期待できますが、「単独で完全に治す」よりも腸管修復のサポート役と捉えるのが現実的です。

(1)  期待できる効果

複数の臨床研究や動物実験で、以下のような改善が報告されています。

効果 メカニズム
腸内細菌叢の正常化 ビフィズス菌・乳酸菌などが善玉菌優位のバランスを作る
腸管バリア機能改善 一部の菌株(Lactobacillus rhamnosus GG など)がタイトジャンクションタンパク(ZO-1, occludin)発現を促進
炎症の軽減 IL-10など抗炎症性サイトカインの誘導、腸管粘膜のTNF-α産生抑制
有害菌の抑制 大腸菌・クロストリジウム属などの過剰増殖抑制
腸管免疫調整 粘膜IgA産生促進でバリア強化

(2)  エビデンスの現状

  • 小規模臨床試験やメタ解析では、リーキーガット関連の指標(Lactulose/Mannitol比、血中LPS濃度)が改善した報告あり

  • ただし菌株や投与量・期間によって結果がまちまち

  • 食事改善や亜鉛・グルタミンなどの栄養療法と併用した場合に効果が最大化される傾向

(3)  実務的なポイント

  • 菌株選びが重要

    • Lactobacillus rhamnosus GG

    • Bifidobacterium lactis

    • Lactobacillus plantarum 299v

    • Saccharomyces boulardii(耐性酵母)

  • 目安投与量
    1日あたり100億〜500億CFU(菌株により異なる)

  • 期間
    少なくとも4〜8週間継続して効果を判定

  • 併用推奨
    プレバイオティクス(食物繊維、イヌリン、レジスタントスターチ)との併用が有効性を高める

(4)  注意点

  • 免疫不全患者ではごくまれに菌血症リスク(特に乳酸菌製剤の静脈内混入事故など)

  • 下痢や膨満感が一時的に増えることあり(多くは一過性)

🔍 まとめ
プロバイオティクスは、リーキーガットの腸バリア修復を助ける補助療法としては有望ですが、単独より下を組み合わせた多角的アプローチが最も効果的です。

  1. 原因除去(食事・薬剤)

  2. 栄養補充(亜鉛、グルタミンなど)

  3. 腸内環境改善(プロ・プレバイオティクス)

7. まとめ

  • リーキーガットは「腸のバリアが壊れ、不要なものが体に入ってしまう状態」

  • 下痢・便秘・肌荒れ・疲労・痩せすぎなど、多くの症状の原因となりうる

  • 食事・栄養・生活習慣の見直しが大切

  • 腸を整えることが、健康と体重の改善につながる

📚 勉強に役立つ総説論文

日本語(医師向け総説)

  • 渡辺憲明.「腸管バリア機能と全身疾患」日本消化器学会雑誌 2018;115(5):415-423.

  • 山本一彦.「リーキーガット症候群の臨床的意義」日本臨床免疫学会誌 2017;40(2):75-82.

英語(レビュー論文)

  • Fasano A. "Leaky gut and autoimmune diseases." Clinical Reviews in Allergy & Immunology. 2012;42(1):71–78.

  • Camilleri M. "Leaky gut: mechanisms, measurement and clinical implications in humans." Gut. 2019;68(8):1516–1526.

  • Odenwald MA, Turner JR. "The intestinal epithelial barrier: a therapeutic target?" Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2017;14:9–21.

 

2025/08/30 第1稿

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