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高血圧症について

高血圧症は日本人の4300万人が罹患しているきわめてありふれた疾病です。まさに3人に一人、成人であれば2人に一人という多さです。上の血圧(収縮期)が140 mmHg以上もしくは下の血圧(拡張期)が90 mmHg以上の場合を高血圧症と診断され、きわめてシンプルです。血圧を下げる降圧薬も現在では様々種類があり、薬飲んで血圧を下げれば問題ないだろうと思われがちですが、高血圧症にはまだまだたくさんの問題があります。

まず、適切にコントロールされている方はわずか1200万人であり、自分が高血圧であることを知らない方が1400万人、知っていても治療されていない方が450万人、治療していても目標値に達していない方が1250万人とされています。最後のグループは医療側も患者側もこの程度でいいかと妥協している光景でイナーシャ(惰性)と言われます。

血圧上昇の原因は不明である方が9割で、具体的な原因疾患が認められる場合は1割に過ぎません。原因の多くに食塩摂取量が関係していることは明らかで、生活習慣の改善では1に減塩、2に減塩と言われる所以です。理想的には1日塩分摂取量は6gとされていますが、塩味に慣れている日本人にはかなり難しいハードルです。

当クリニックでは、受診された際の一回尿を調べることによって、おおよその塩分摂取量を推定して患者さんにフィードバックしています。予想より多かったり、逆に少なかったりと患者さん本人の感覚とはしばしば解離が見られます。

高血圧症が怖い病気であることはサイレントキラーとの別名からうかがえますが、それはどうしてでしょうか。頭痛、めまい、耳鳴り、肩こりなどの症状を訴えずに、徐々に心臓、脳、腎臓、動脈などに元に戻らないダメージを与えて命さえ奪ってしまうからです。本邦の高齢者において、脳心血管病による死亡は癌によるものと同程度であり、かつ介護を必要としない健康寿命を大幅に短縮している実情があります。世界においても感染症によらない死亡の原因の多くは高血圧と喫煙とされています。

したがって、ご自分の血管がどのくらい若々しいかあるいは年をとっているのかを知ることは、早めの気づきと治療に直結します。まさに『敵と己を知れば百戦あやうからず』を地で行くようなものと言えるでしょう。当クリニックでは、その場で血管年齢がわかる検査を行っています。心電図と同時に検査できますので効率的です。下に、血管年齢が若い方と老齢の方の見本を付けましたのでご覧ください。

血管年齢の検査方法(CAVIについて)

若い血管年齢の検査結果 老化した血管年齢の検査結果

 


降圧薬については、次の機会に記述したいと思います。

2023/7/29初校

2023/12/08改訂

 

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